第312章 過去の出来事

翌日、神城連真は早くに目を覚ました。

彼は無意識に隣の女性を見た。

指先で彼女の鼻、唇、そして顎を優しく撫でていた。数分間見つめる間もなく、霧島咲姫がうつらうつらと目を覚ました。おそらく動きが大きすぎたのだろう。

彼女は以前、自分が神城連真の腕の中で横たわることになるとは思ってもみなかった。一瞬、彼女の心には言い表せない感情が湧き上がった。ゆっくりと顔を上げると、男性が自分をじっと見つめていることに気づいた。

「い...いや....ちょっと待って....」霧島咲姫は一瞬にして言葉がどもりがちになり、次の瞬間、彼女はすぐに起き上がってスリッパを履き、洗面台へ向かった。

鏡に映る自分を見て、彼女は何を言えばいいのか分からなかった。先ほどの場面を思い出すだけで、心の中で非常に気まずく感じた。これは本当に恥ずかしすぎる。

もともと神城連真はとても格好良く、360度どこから見ても完璧なのに、まさかあんな眼差しで自分を見つめるなんて。

「霧島咲姫、一体何を考えているの?さっきの場面を思い出すのはもうやめて、これから仕事に行くんだから、このことで気が散るわけにはいかないわ」

彼女は独り言を言った。そう言うと、無意識に深呼吸をして心を落ち着かせ、洗顔を始めた。すぐに彼女は階下に降り、朝食を食べ始めた。

そうこうするうちに、神城連真も急いで身支度を整え、当然ながら階下に降りて朝食を食べに来た。

彼は無意識に霧島咲姫の隣に座り、さらに隣の椅子を彼女の方に引き寄せた。こうして、二人はほとんど寄り添うようにして食事をした。

「何してるの?あっちにはたくさん席があるのに、どうして私の側に寄ってくるの?これじゃあ落ち着いて食事もできないわ、居心地が悪いわ」

霧島咲姫はそう言うと、無意識に手に持っていた食事を置き、椅子を少し横にずらそうとした。

神城連真はその様子を見て、心の中で何故か不快感を覚えた。

「どうしたの?僕はただ君と親しくなりたいだけだよ。それに、そんなに急いで食べる必要はないよ。後で一緒に行こう、会社まで送っていくから」

こうして、二人は急いで食事を終えると、ちょうど出勤時間になった。道中、霧島咲姫は何を話せばいいのか分からず、車内の雰囲気は極めて気まずいものだった。