姪っ子ちゃんに薬を

鈴木音夢はゆっくりと彼の上半身を拭いてから、クローゼットに歩み寄り、綿の寝巻きを取り出した。

彼に服を着せながら、文句を聞かされている。「あれだけ金をかけて買い取った割には、大した役は立たないみたいだな?世話人程度の仕事もうまくできないのか?」鈴木音夢は先ほどの食事で、卓田様が上機嫌になってくれたなんて、甘く思っていた。

そのうち彼の病気が良くなったら、功績はなくても苦労はしたという点で、彼女を解放してくれるよう頼めるかもしれないと。

今となっては、それは無理そうだね?

……この世では、卓田越彦に待たせる人間はいない。

そう思うと卓田越彦はさらに怒りを募らせた。確かに今は視力を失っているが、彼と一緒にいることが、彼女にとってそんなに辛いことなのか?

「谷口先生を呼んでくれ」卓田越彦は眉間をさすりながら、この娘と自分の相性は、そこまでも悪いのかと考えた。

鈴木音夢はその言葉を聞いて、また具合が悪くなったのかと思い、すぐに走り出した。

「林執事、林執事、医者を……」

鈴木音夢の焦った声を聞いて、林執事はすぐに出てきた。「鈴木さん、何があったのですか?」

「おじさまの具合が悪いみたいです。谷口先生を呼んでほしいと」

林執事はそれを聞くとすぐにトランシーバーを取り出した。5分後、医療チームが本館に集まってきた。

部屋に入ると、谷口先生は素早く医療バッグを開けたまま尋ねた。「若様、どこがお悪いのですか?」

谷口先生は軽く咳払いをしてから、もう一度尋ねた。「若様、やはり健康には気をつけないと。私を呼んできたのは、どこか具合が悪いからですよね?」

「谷口先生、今日、目に少し光が見えたような気がする。とても薄く、ぼんやりとだが」

卓田越彦の言葉を聞いて、谷口先生はすぐに検査を始めた。

検査が終わると、谷口先生は興奮した声で報告した。「若様、例の血栓、徐々に小さくなっていく兆候が出ました。その状態が続けば、開頭手術のリスクを冒せずとも、完治できるかもしれません。それにしても驚きましたね。ご主人が連れてきた若い娘さんのおかげで、若様にこんな奇跡が起きたなんて」