第037章 彼の異なる温もり4

「狼がいるなんて聞いたことがない？」鈴木音夢は目を見開き、木の椅子に座っている男を振り向いた。

彼は平然とした顔で、少しも恥じる様子もなく、なんて厚かましいのだろう？

昨夜、彼から裏山に狼がいて、人肉を好むと聞かされ、彼女は怖くて泣いてしまったのだ。

くそったれ！悪魔！人間じゃない！

鈴木音夢は心の中で歯ぎしりしながら、怒りを感じても口に出せなかった。

誰が先に彼を騙したのか？それに昨夜彼が自分を許してくれて、今朝起きたら手足が全部あるのは、幸運だと言えるだろう。

卓田越彦は庭師の言葉を聞いていた。その小さな女性の今の表情は見えなくても。

しかし彼女がどんな反応をするか予想できた。きっと怒っているけれど、反抗する勇気はない。

そんな姿を想像すると、かわいいと思えた。

鈴木音夢は彼を無視することにして、竜眼の木の下に行き、一番大きくて熟した竜眼を摘んだ。

まず一つ皮をむいて、種は小さく、水分が多くて、とても甘かった。

一つ食べると、もう一つ食べずにはいられなかった。

お金持ちは贅沢だ。こんなにたくさんの果物があるのに、誰も摘まないで、中には地面に落ちているものもある。なんてもったいないのだろう？

彼女はもっと摘んで、鈴木世介にも持って帰りたいと思った。彼のアルバイトはどうなっているのだろう？

彼がまだ若いのにプログラミングができることを考えると、誇らしく思えた。

彼女はいくつか摘んで、卓田越彦のそばに行き、「おじさま、この竜眼とても甘いわ。いくつか家に持ち帰れたらいいのに」と言った。

そう言うと、自ら一つの皮をむいて、卓田越彦の口元に差し出した。

卓田越彦は甘いものはあまり好きではなかったが、このチビが口元まで持ってきたのだから、少しは面子を立ててやらねばならない。

うん、今年の果物は確かに甘い。

「日曜日に半日休みを与えよう。その時に持って帰るといい」

鈴木音夢は彼の言葉を聞いて、自分の耳を疑った。卓田越彦が週末に半日休みをくれるの？

「おじさま、本当ですか？日曜の午後に家に帰れるんですか？果物も少し持って帰っていいんですか？」

「ああ！」彼の言葉は、そんなに信じられないものだろうか？

音夢は卓田様がうなずくのを見て、嬉しさのあまり我を忘れ、思わず彼の首に腕を回して、頬にキスをした。