卓田越彦は少し困ったような表情を浮かべた。彼女は彼を信じると言ったが、その声には恐怖が滲んでいた。
しかし、彼も自分を責めるしかなかった。最初に節度を知らず、彼女をこんなに怯えさせてしまったのは自分なのだから。
「いいよ、おじさんは待てるから、今夜はもういいよ。怖がらないで、いい?」
鈴木音夢は卓田越彦がそう言うとは思っていなかった。彼はついに自分の気持ちを考えてくれたのだ。
しかし、彼女は彼の胸にぴったりと寄り添い、歯を食いしばって、小さな手で彼の腰に腕を回した。「おじさん、私...私はできると思う」
卓田越彦は軽く目を細め、今の彼女の表情を見たいと思った。しかし、灰色がかった光の筋しか見えなかった。
彼は手を伸ばして彼女の頬をつまんだ。柔らかかった。「いいよ、まずはお風呂に入ろう」
このお風呂は、最終的には混戦となった。
鈴木音夢は息を切らし、最後には卓田越彦が彼女を浴槽から抱き上げることになった。
卓田越彦は彼女を抱きかかえ、音夢の指示に従って、二人は無事にベッドにたどり着いた。
卓田越彦が次の一歩を踏み出そうとしたとき、鈴木音夢の携帯電話が鳴り始めた。
卓田越彦は少し不機嫌になり、眉をひそめながら彼女が電話に出る声を聞いていた。
「もしもし、松川さん...」
ふん!松川さん!なんて親しげな呼び方だ!
鈴木音夢は松川悠斗からの電話を見て、鈴木世介に何かあったのかと思った。
「音夢、午後は忙しくて忘れてたんだ。電話するの忘れてた。もう家に着いた?」
やはり鈴木世介の上司だったので、音夢はとても丁寧に応じた。「ありがとう、松川さん。もう家に着きました」
突然、鈴木音夢は悲鳴を上げた。卓田越彦という獣が、彼女の胸を激しく撫でたのだ。
電話の向こうの松川悠斗は、鈴木音夢の悲鳴を聞いて驚いた。
「音夢、どうしたの?大丈夫?」
鈴木音夢は一糸まとわぬ姿で、しかも卓田越彦という獣に弄ばれていた。彼女の顔は真っ赤に染まっていた。
「だ...大丈夫です、松川さん。もし他に用がなければ、先に電話を切らせてください」
「ああ、じゃあ先に用事を済ませて」
松川悠斗は本来なら彼女を食事に誘おうと思っていたが、唐突にそう言うのは彼女を驚かせるかもしれないと思った。
鈴木音夢は電話を切り、少し怒っていたが、怒りを表に出す勇気はなかった。