第121章 強靭、絶体絶命からの生還5

立林絹子と鈴木国彦は卓田越彦の声を聞いて、彼が気持ちを変えて、彼らを許してくれたと思った。

しかし、この男の最後の言葉を聞いて、彼らはさらに背筋が凍りついた。

「彼らの指はまだ多すぎるし、足もまだ歩けるようだ。余計なものだな」

竜川と岩山はすぐに卓田越彦の意図を理解した。「若様、承知しました」

卓田越彦は大股で地下室を出て行き、後ろから豚を屠るような悲鳴が聞こえてきた。

彼は彼らの命だけは残しておこうと考えていた。チビを見つけたら、彼女自身に鬱憤を晴らさせてやるつもりだった。

それが彼らが存在する唯一の価値だった。

「すぐにイギリスの航空便を調査して、最速で鈴木音夢を見つけろ」

卓田越彦は眉間をこすった。チビがそばにいる日々に慣れていた。

今は彼女の声が聞こえず、世界があまりにも静かで、つまらなく感じられた。

「はい、若様。私が直接調査に行きます」

卓田越彦はうなずいた。馬場嘉哉に任せれば安心できる。

本邸に戻ると、卓田正修は眉をひそめた。「また出かけたのか？医師は退院を許可したが、まだ静養が必要だと言っていたぞ」

卓田越彦は彼と話す気分ではなかった。チビがいなくなったことには、彼にも責任があった。

林柳美はキッチンから出てきて、階段を上る卓田越彦を見て、軽く眉をひそめた。

「あなた、焦らないで。後で使用人に栄養スープを部屋に持っていかせるわ。鈴木さんがいなくなって、彼は気分が良くないのよ」

卓田越彦も仕方ない。林柳美がこの家に嫁いで何年も経つが、卓田越彦が女性に心を寄せるのを見たのは初めてだった。

「はぁ、私が悪いんだ。あの時、警備員は越彦に注目していて、私の目の前で人が入れ替わってしまった。あの日もっと早く病院に着いていれば、鈴木国彦には手を出す機会すらなかったのに」

「あなた、何とか早く彼女を見つけましょう。鈴木さん以外は、越彦の目に入らないでしょうから」

卓田正修もそうしたいと思っていた。ただ、ここ数年は引退して世間のことには関わっていなかった。

息子はどの面でも父親を超えており、彼はそれを誇りに思っていた。

今は息子が自ら捜索しているので、彼女を見つけるのはそれほど難しくないだろう。

しかし、誰も予想していなかったが、鈴木音夢はイギリスにはいなかった。