第163章 君が噛んだ歯形15

鈴木音夢は卓田礼奈を見ると、いつも何か見覚えのある感じがした。しかし、一時的に彼女が誰なのか思い出せなかった。

卓田礼奈は今、鈴木音夢を見ると、まるでライバルを見るような表情をしていた。

言うまでもなく、恋のライバル同士が会えば、特に目が赤くなるものだ。

卓田家の次女は幼い頃から、どんな屈辱も受けたことがなかった。ほんの些細なことでも、大げさに騒ぎ立てることができた。

さらに、彼女は本当に鈴木世介のことが好きだった。

彼女が鈴木世介を追いかけてこれほど長い間、彼は彼女に一度も笑顔を見せてくれなかった。

それなのに、この突然現れた女性が、あっという間に鈴木世介と同棲するなんて。

この怒り、どうやって飲み込めばいいのか？

「警備員はどこに行ったの？今の卓田財団は、誰でも自由に入れるようになったの？」

卓田礼奈が警備員を呼んで追い出そうとしたとき、鈴木音夢の携帯が鳴り始めた。

「姉さん、杏子が突然倒れて、鼻血も出てる。今すぐ病院に連れて行くから、早く来て。」

鈴木音夢は鈴木世介からの電話を受け、まるで魂が抜けたようになった。

彼女は卓田礼奈を無視して、大股で走り出し、顔色は紙のように真っ白になっていた。

卓田礼奈は慌てて去っていく鈴木音夢を見て、眉をひそめた。「今の女性は何の用事で来たの？」

受付の女性は当然卓田礼奈を知っていたので、急いで言った。「先ほどの女性は、直接社長に会いたいと言っていました。とても急ぎの用事があるようで、彼女の様子を見ると、本当に社長を知っているようでした。」

「兄を？」

卓田礼奈の心はさらに疑問に思った。彼女は鈴木世介の最愛の女性ではないのか？どうして兄を知っているのだろう？

それに、彼女は一度も会ったことがないのに、どうして兄を知っているのだろう？

もしかして、彼女は鈴木世介を誘惑するだけでなく、二股をかけて鈴木世介に浮気されるつもりなのか？

ふん！彼女はそんなことが起こるのを絶対に許さない。

彼女は必ず真相を究明して、鈴木世介に彼女の本当の姿を見せるつもりだ。

「はい、彼女は確かに社長に会いに来たと言っていました。」

「彼女の名前は？連絡先は残したの？」

「いいえ、残そうとしたところで、二小姐がいらっしゃいました。」