鈴木世介は彼女が卓田家の門に入るのをずっと見ていて、やっと振り返った。
彼が振り返った瞬間、卓田礼奈は思わず振り返り、彼の去っていく背中を見つめた。
彼が先ほど話した口調や表情を思い出し、卓田礼奈は心の中で幸せを感じていた。
彼女は小さな歌を口ずさみ、顔の笑みをどうしても隠せなかった。
彼女は杏子のそばに行き、「杏子、週末に叔母さんが小舅と遊びに連れて行ってあげるわ、いい?」
杏子は頷いて、「うん、小舅と遊びに行こう」と言った。
林柳美は卓田礼奈の表情を見て、まるで眉先まで笑みに溢れているようだった。
その表情は、完全に恋に落ちた様子だった。
どうやら、この娘は本当に鈴木世介という若者を好きなようだ。
「礼奈、杏子はちょうど退院したばかりで、まだ静養が必要だから、あちこち連れ回さないで。二、三日後、お母さんと私は杏子を薬生え山に連れて行くつもりだ。ついでに谷口さんに杏子の体調を整えてもらおうと思っている」