第352章 チビ、お前は俺のものだ5

井上菜々は大変な苦労をして、ようやく水から這い上がった。

彼女は全身が震え、寒くなったり熱くなったりして、間違いなく熱を出していた。

周りを見回すと、みんな一緒に流されたはずなのに、他の人の姿が見えない。

空には明るい月が高く掛かり、彼女の目は物がぼやけて見えた。

井上菜々は痛みに耐えながら、夜明けまで頑張った。

この時になってようやく太ももがなぜこんなに痛いのかわかった。流されたときに木の枝に刺されたようだ。

ここで死んでしまうのだろうか?誰か助けに来てくれるのだろうか?

井上菜々は棒を一本見つけ、それを杖にして前に進んだ。

しばらく歩くと、白いものが彼女の目を引いた。

井上菜々はリンダがその時白いドレスを着ていたことをぼんやりと思い出した。もしかして彼女もここに流されてきたのだろうか?

足の痛みも構わず、井上菜々は足を速めた。

近づいてみると、確かにリンダだった。

彼女がそこに動かずに横たわり、額に傷を負っていた。頭をぶつけたのかもしれない。

井上菜々は心配になった。リンダはもう死んでいるのではないか?

勇気を出して、彼女の鼻に手を当てて息を確かめると、かすかな息づかいがあった。

井上菜々は急いで彼女を仰向けにし、頬を叩いた。「リンダ、目を覚まして、お願い目を覚まして!」

雨で化粧が流れ落ち、井上菜々が見た彼女の今の姿は、以前の林浅香そのものだった。

井上菜々は心臓マッサージを始めたが、しばらく続けても林浅香は目覚める様子がなかった。

「林浅香、死なないで、絶対に死なないで。静雄があなたをあんなに好きなんだから、頑張って!」

井上菜々は10分以上マッサージを続けたが、林浅香は目覚めなかった。

自分の体が熱と寒気で苦しいのも構わず、彼女を支え起こし、怪我を丁寧に調べた。

林浅香の体には多くの擦り傷があったが、どれも深刻ではなかった。

最後に、井上菜々は彼女の髪をかき分け、頭部に深刻な打撲を発見した。

まずい、彼女が意識不明なのは頭を打ったせいなのか?

このままでは、彼女は死んでしまうのではないか?

その瞬間、井上菜々の頭の中は古田静雄の悲しむ姿でいっぱいになった。

危機的状況の中、井上菜々は驚くべき爆発力で林浅香を背負い、苦労しながら前に進んだ。