卓田越彦は杏子の言葉を思い出し、目の前の黄色い泥で濁った川を見つめながら、眉をひそめた。
「杏子、お母さんが他に何か言っていた夢を見た?」
昨晩のニュースを聞いた後、杏子は泣きながら悪夢を見たと言った。きっと音夢が杏子に夢で何かを伝えようとしているのだろう。
杏子は音夢にとって命そのものだった。
チビが一番離れたくない人は、間違いなく杏子だ。
「お母さんはずっとお父さんに早く助けに来てって言ってた。お父さん、見つかった?」
杏子は続けて二回悪夢を見た。どちらもお母さんが水に落ちる夢で、彼女はとても怖がっていた。
こんなことは、今まで一度も起きたことがなかった。
「いい子だね、お父さんは今探しているところだよ。おじいちゃんの言うことを聞いて、お父さんとお母さんが帰ってくるまで家でおとなしく待っていてくれる?」