第364章 杏子、掌中の花1

卓田越彦は電話を握りしめ、少し興奮しながらも、少し不安げに言った。「本当に私の妻があなたの手元にいるのですか？」

「卓田さん、ニュースで見ました。報酬があるとか」

「妻だと確認できれば、お金は問題ありません」

相手は男で、卓田越彦がそう言うのを聞いて、さらに付け加えた。「卓田さん、急いで来てください。彼女の状態はあまり良くありません。体中に傷を負っていて、ここの医師では救えないかもしれません」

「分かりました、すぐに行きます」

彼はその情報が本当かどうか分からなかったが、これほど多くの日々の中で、初めて鈴木音夢の行方についての手がかりがあったのだ。興奮しないわけがあるだろうか？

彼女がまだ生きているだけで、何よりも良かった。

男は電話を切った後、邪悪な笑みを浮かべた。「ボス、卓田越彦が今向かっています。彼は騙されるでしょうか？」

「普段なら、彼を騙すのはほぼ不可能だ。しかし当事者は迷いやすく、彼はあれほど鈴木音夢を愛している。今、人が見つかったと聞いて、どうして疑うだろうか？それに、茉莉が作った人皮マスク、信用できないのか？卓田家に潜入して、玉石を手に入れればいいんだ」

「ボス、すぐに手配します。この数日間、茉莉は卓田家のすべての状況を把握しています」

「行け、彼女に伝えろ。必ず慎重に行動するように。玉石を手に入れる前に、決して卓田家の人に正体を見破られてはならない」

卓田越彦は電話を受けた後、非常に興奮した気持ちで、すぐにヘリコプターに乗り、卓田風太を連れて迎えに行った。

鈴木音夢が発見された場所は、海辺の漁師の村で、医療環境は非常に悪かった。

約1時間後、卓田越彦と卓田風太が到着した。

卓田越彦の信頼を得るために、茉莉は大金をかけて自分を重傷に見せかけ、それも水に浸かったような傷にした。殺し屋組織の人間は、みな専門的な訓練を受けていた。

卓田越彦は来る途中、また失望するのではないかと心配で、胸がドキドキしていた。

ベッドに横たわる人を見たとき、その体には数え切れないほどの傷があった。

一部の傷は化膿していて、彼の胸が痛んだ。

卓田越彦は彼女の手を握り、「チビ、ごめん、遅くなった。風太、早く彼女を診てくれ」