第463章 移花接木6

古田静雄は彼女が退院したと聞いて、体の具合は大丈夫だろうと思った。

最近忙しくて、彼女のことまで気にかける余裕がなかった。「うん、井上さん、これからも彼女のことをよろしく頼む。何かあったら、すぐに知らせてくれ」

「はい、古田さん……」

電話を切ると、井上菜々は携帯を見つめ、画面に表示された番号を見た。

思わず苦笑いした。井上菜々よ井上菜々、何を興奮しているの?

古田静雄が好きなのはリンダで、あなたのことを好きになったことなんて一度もないのよ。

子供の頃に優しくしてくれたのも、あなたを救ってくれたのも、ただあなたが弱い小娘だったからかもしれない。

古田静雄は生まれつき正義感が強いから、他の誰かでも同じように助けていたはずだ。

井上菜々は黙って電話を脇に置き、鈴木音夢に話して、自分をリンダのアシスタントに異動させてもらおうかと考えた。