第476章 善人には天の加護あり1

卓田越彦は電話に出て、ただ簡単に一言だけ言った。「もしもし……」

電話の向こう側の人物は、今の卓田越彦の声があまりにも冷静なのを聞いて、冷笑した。「卓田社長、虹色の玉石を一時間後に指定の場所に届けろ。さもなければ、お前の娘の死体を拾うことになるぞ」

卓田越彦は位置を特定している技術者たちを見て、「わかった、約束しよう。だが、もし娘の髪の毛一本でも傷つけたら、お前たちがどこに逃げようと、掘り出して八つ裂きにしてやる」

「我々の目的は玉石を手に入れることだ。もし何か細工をするなら、お前の娘にもいい思いをさせてやるぞ。古代日本には骨醉という遊びがあると聞いた。人の手足を切り落として、酒甕の中に入れるというものだ」

言い終わると、ピーターは不気味に笑い出した。

ドアの後ろで盗み聞きしていた鈴木成典は、その言葉を聞いて足がすくんでいた。これはいったいどんな連中なんだ?

卓田越彦は拳を握りしめ、「玉石はやる。だが娘の安全は必ず保証しろ」

古田静雄が彼に目配せをした。電話の発信源を突き止めたのだ。

「住所はお前に送る。一時間後に玉石を届けなければ、娘の死体すら見つからなくなると保証するぞ」

言い終わると、ピーターは電話を切った。

彼はもちろん、ここで卓田越彦を待つほど愚かではなかった。本当の受け渡し場所は別の場所にあった。

一分後、ピーターは住所を送信した。

卓田越彦は携帯に表示された住所を見た。電話の発信源は蒼山だったが、受け渡し場所は南郊外の廃工場だった。

卓田越彦はこの二つの住所を見て、少し考えた。「彼らが送ってきた写真から判断すると、杏子はおそらく蒼山にいる。南郊外は海に近く、黒幕はそこに隠れているだろう。人が少なく、逃げやすい場所だからな」

「二手に分かれよう。お前は時間通りに受け渡しに行け。俺は蒼山に行って杏子を連れ戻す」

鈴木音夢はもう何も言えなかった。今は時間が命だった。

「夫、古田さん、くれぐれも気をつけて」

卓田越彦は彼女の心配を理解し、彼女の額に軽くキスをした。「帰ってくるまで待っていろ。おとなしく家にいて、俺が帰ってくるまでどこにも行くなよ、わかったか?」

鈴木音夢はうなずいた。「わかったわ、帰りを待ってるわ」

卓田越彦は四階に上がり、金庫を開けて、中から錦の箱を取り出した。