彼はチビちゃんを背負い上げ、地面の火を見た。すでに灰になっており、火の気は全くなかった。
彼は適当に足で踏みつけ、チビちゃんを背負ったまま急いで洞窟を出た。
この時、太陽はまだ昇っておらず、朝の山は霧がかかっていた。
鈴木成典は勉強では鈴木世介に遠く及ばないが、方向を見分けることはできた。
木の葉が茂っている方向は必ず東だ。もし間違えたとしても、太陽が昇ってくれば自分が間違ったかどうかわかるだろう。
東に向かえば、海に近い側になり、すぐに森を抜けられるはずだ。
約1時間後、鈴木成典の額には汗が浮かび、空はすっかり明るくなっていた。
鈴木成典は方向を確認し、自分が間違っていないことを確かめた。
正面が特に明るいのは、間違いなく太陽が昇ってくる場所だ。
このとき、チビちゃんはすでに目を覚まし、目をこすりながら「おじさん……」と呼んだ。
鈴木成典は彼女の声を聞き、ようやく目を覚ましたチビちゃんに安堵した。
彼は何も言わずに彼女を地面に下ろし、「自分で歩くんだ。今のうちに明るくなったから、急いで逃げよう。街に戻れば安全だ」と言った。
チビちゃんは目が覚めたばかりでまだぼんやりしていたが、鈴木成典に引っ張られて少し歩くと完全に目が覚めた。
山を一つ越えると、鈴木成典はついに海を見つけた。
彼は思わず大喜びし、「チビちゃん、見えるか?もうすぐ出られるぞ」と言った。
「見えた、見えたよ」
鈴木成典は昨日逃げるとき、わざとあの男から渡された携帯電話を別の方向に捨てていた。
だから、ピーターがその携帯電話を見つけたとき、鈴木成典がきっとその方向に逃げたと思い込んだのだ。
鈴木成典とチビちゃんが自分たちの進む方向が間違っていないことを喜んでいたとき、思いがけず偶然にもピーターが彼らを発見してしまった。
「ピーター兄貴、あっちを見てください、あいつらです……」
ピーターも見つけた。「そのチビちゃんは生きたまま捕まえろ。もう一人は生きてようが死んでようが構わない、早く追え」
鈴木成典はチビちゃんの手を引いて山を下りた。この森を越えさえすれば、彼らは救われるはずだった。
山の麓に近づいたとき、鈴木成典は追っ手が迫ってきていることに気づいた。
「おじさん、どうしよう?追いかけてきたよ」
「チビちゃん、乗って!」