第481章 善人には天の加護あり6

鈴木成典はウサギが徐々に金色に変わっていくのを見つめ、焼き出された油がジュージューと音を立て、香りがますます濃厚になっていった。

鈴木成典はそのウサギを杏子の前で振りながら、「杏子、おじさんはどう?おじさんだって美味しいものを食べさせてあげられるでしょう」と言った。

チビちゃんは唾を飲み込みながら、頷いた。「おじさん、もう食べていいの?」

鈴木成典は丁度いい頃合いだと思い、一切れ切り分けて、木の枝で挟んで、「チビちゃん、今後おじさんが美味しいものをくれないなんて言ったら、おじさんはお仕置きするからね」と言った。

午後ずっと逃げ回っていたので、今、杏子はお腹が空いて目が輝いていた。

彼女は大きく口を開けて噛みついたが、少し熱かったので、その姿は少し狼狽えていた。

鈴木成典も空腹で倒れそうだった。彼は足を一本千切って、味はないが、純粋な野生のウサギ肉だった。

二人の空腹な人間にとっては、十分に美味しかった。

30分後、大人と子供の二人はすっかり満腹になっていた。

杏子は少し眠くなり、しばらくすると石の上で眠りこけてしまった。

鈴木成典もこれ以上歩きたくなかった。今は暗くなっていて、方向がまったく分からなかった。

彼は時間を確認し、少し薪を足して、チビちゃんを抱いて石の上で寝た。

外の人々は、チビちゃんのことで大騒ぎしていた。

誰も予想していなかったが、この瞬間のチビちゃんは、洞窟の中で豚のように熟睡していた。

ピーターは蒼山の地形をまったく知らず、焦って探していたが、完全に方向感覚を失っていた。

茉莉はゆっくりと後ろについて行きながら、あのチビちゃんと愚かな鈴木成典が本当に逃げ切ったことを考えていた。

取引が失敗したので、卓田越彦の部下たちがすぐに山中を大規模に捜索するだろう。

彼女はほぼ確信していた。もし明朝までにここを離れられなければ、彼らの生存確率は大幅に下がるだろうと。

ピーターは人を見つけられず、一番近くにいた部下に平手打ちを食らわせた。「見つからなければ、全員死を覚悟しろ」

部下たちは怒りを感じても口に出せず、腹に一杯の怒りを溜め込んでいた。

こんな広い場所で、四方八方、あらゆる方向に通じているのに、彼らの進む方向が間違っているかどうか誰が知るだろうか?