第305章 説得

安藤玄は黄田社長の心理を見抜いていたからこそ、そのように言ったのだ。案の定、黄田社長はそれを聞いて2秒ほど沈黙した。北村グループはずっと太陽グループのライバルであり、長年彼らは北村グループの後を追い続けてきた。もし北村グループの技術プロジェクトが本当に成功すれば、会社は大きく引き離されてしまうだろう。

「安藤支配人、上で話しましょうか」黄田社長は非常に心を動かされ、周囲を見回してロビーが話をする場所ではないと判断し、ようやく口を開いた。安藤玄はうなずいた。黄田社長が自分を招待してくれれば、すでに半分以上成功したも同然だと彼は知っていた。

安藤玄は黄田社長についてオフィスへ向かった。

黄田社長のオフィスに入るとすぐに、黄田社長はまず椅子を引き寄せて彼を座らせ、自ら水を一杯注いでから、困ったような表情で言った。

「安藤支配人、我が社はあなた方のプロジェクトに確かに興味がありますが、安藤支配人もご存知のように、我が社はネット上の一部の事柄についてはかなり気にしています。言いにくいことですが、私たちは賭けられないのです。福井グループは最近株価が継続的に下落しており、もし私たちの上に降りかかってきたら…」

黄田社長の言葉は途中で終わったが、安藤玄はその意味を理解していた。要するに、ネット上の世論のために、自分、あるいは福井グループに賭けることができないということだ。太陽グループの大切な評判が福井グループのせいで傷つくことを恐れているのだ。

「黄田社長、御社の懸念はわかります。しかし、ネット上の騒動はすぐに終わります。それらの根も葉もないうわさも覆されるでしょう。そうなれば、太陽グループに影響を与えるどころか、むしろ両社は協力によってさらに一段階上がることになるでしょう」と安藤玄は説明した。

黄田社長はそれを聞いて、目に驚きの色を浮かべた。

彼はしばらく考えた後も返事をしなかったので、安藤玄はこのタイミングで強い一手を打った。「福井グループには最先端の技術設備と技術者がいます。そして私たちは太陽グループの対外的な知名度に注目しています。もし私たちの二社が研究協力をすれば、北村グループよりも早く完全自律型の家具ロボットを開発できると確信しています。いかがでしょうか」