第372章 嘘はない

小林桂子は断れず、承諾するしかなかった。同時に心の中で誓った、これからはもっと心を込めて饅頭の世話をすると。

その夜、安藤凪はお風呂から上がり、浴室を出たところで、福井斗真がソファに座ってメールの処理をしているのを見た。

彼は金縁の眼鏡を鼻にかけ、シルクのパジャマを着ていた。胸元は開いており、鍛え上げられた胸筋が露わになっていた。彼女の目は思わず福井斗真の姿に釘付けになった。

真剣な男性が最もかっこいいというのは、古今不変の真理だ。おそらく安藤凪の視線があまりにも熱かったせいか、福井斗真はその時顔を上げた。彼は安藤凪を見て、一瞬固まった。

安藤凪は浴室から出てきたばかりで、全身が湯気に包まれていた。彼女の小さな顔は白くて赤みを帯び、まるで熟した水蜜桃のように、彼の手で摘み取られるのを待っているようだった。

彼女の滝のような黒髪は肩に流れ落ち、白いシルクのパジャマを着ていた。体に残った水滴で服が濡れ、体にぴったりと張り付き、彼女のくびれたボディラインを完璧に強調していた。

福井斗真ののどぼとけが上下に動いた。

この瞬間、別荘の恒温空調が壊れたかのように、部屋の温度が急上昇した。彼は安藤凪に手招きした。

安藤凪は敏感な小動物のように、福井斗真に向かって探るように歩み寄った。

彼女が福井斗真の横まで半メートルも来ないうちに、福井斗真に手首をつかまれた。彼が少し力を入れると、安藤凪の体は制御不能に前に傾き、無重力感に彼女は思わず驚きの声を上げた。

福井斗真は安藤凪をしっかりと腕の中に受け止めた。彼の手のひらは安藤凪の腰をしっかりと固定し、彼女を自分の胸に引き寄せた。彼女が驚いて顔色を失っているのを見て、福井斗真は顔を安藤凪の肩に埋め、低く笑った。

胸の震えは薄い布地を通して安藤凪の体に伝わった。男性の身体から漂う淡い杉の香りが彼女の鼻先を包んだ。

彼の吐く熱い息が安藤凪の首筋に大きなピンク色の跡を残した。彼女はまるで死にかけの白鳥のように首を伸ばし、薄い唇を半開きにした。

「凪ちゃん、僕はいつでも君を受け止めるから、怖がらなくていいよ」福井斗真は安藤凪の首筋に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。彼の整った顔には陶酔の表情が浮かび、片手を安藤凪の手の甲に置き、タコのある指先で彼女の手の甲を優しくなでた。