第371章 追い出す

福井斗真は目を細め、脅すような口調で言った。

「もし二度と、私の名前を使って何かを約束したと知ったら、絶対に許さないぞ。今のうちに、私が考えを変える前に、ここから出て行け」

「福井斗真、私はあなたの母親よ、母親なのよ!」

山田嵐はまるでそれしか言えないかのようだった。

ついに福井斗真は我慢の限界に達し、入口の警備員を呼んで山田嵐を追い出させた。警備員は左右から山田嵐を引きずり、まるで喋る柔らかい肉の塊を引きずるかのようだった。

山田嵐の叫び声が次第に消えていくと、安藤凪の表情はようやく和らいだ。そのとき、高橋雅子が近づいてきて好奇心いっぱいに尋ねた。

「凪ちゃん、あなたの姑...つまり今の女性は、いつ饅頭を連れ出したの?私、知らなかったわ」

安藤凪はポルトガルでの出来事を説明すると、高橋雅子は歯ぎしりするほど怒った。

「そうか、彼女が裏で糸を引いていたのね。福井社長が間に合わなかったら、あなたと饅頭は本当にあの最悪な母娘に騙されるところだったわ。もし彼女がそんなことをしたと知っていたら、私は彼女を家に入れなかったわ」

安藤玄も不機嫌そうに頷いた。

「何も起きなくて良かったわ。でも山田嵐の様子を見ると、このまま諦めるとは思えないわね。そういえば、斗真、前に実家に帰ったとき、彼女を見かけなかったけど」安藤凪は顔を向けて福井斗真に尋ねた。

福井斗真は気にしない様子で答えた。

「祠堂はもう建て直したから、私は実家の人たちに山田嵐を一歩も家に入れないよう命じた。この間、山田嵐がどこに住んでいるのか知らないが、彼女が性懲りもなくまた大金の高利貸しを借りたことは知っている」

そこまで言うと、彼の目には嫌悪感が満ちていた。

「高利貸しの連中がまた実家まで追いかけてきたが、今回は特別に実家に警備員を配置していたから、高利貸しの連中を懲らしめた。彼らはもう実家まで取り立てに来ることはないだろう」

「山田嵐がまた高利貸しから借金したの?」安藤凪は驚いた。山田嵐は高利貸しのせいで食べるものにも困る日々を過ごしたのに、それをもう忘れてしまったのだろうか?

前回の高利貸しの件は、福井斗真が怒って警察にお金を届けたことで無効になったのだ。山田嵐は福井斗真が毎回自分の尻拭いをしてくれると思っているのだろうか。

「じゃあ、山田嵐の借金は?」