第406章 サボり

安藤凪がこの件について触れなければよかったのですが、触れた途端、高橋雅子の抑えていた怒りが一気に燃え上がりました。

「全部あなたの弟のせいよ。あの木頭!私が二つのプロジェクトのスケジュールを入れ替えても問題ないって言ったのに、彼は絶対に認めない、時間の無駄よ!あなた、どっちが悪いか判断して。」高橋雅子は安藤凪の腕を引っ張り、伊藤茜に用事があったことをすっかり忘れて、彼女を直接安藤玄のオフィスへ連れて行きました。

しかし、オフィスに着いたとき、安藤玄はあるプロジェクトのために外出していて、高橋雅子はひどく腹を立てました。安藤凪は親友が怒り心頭の様子を見て、彼女の腕を軽くたたきました。

「夜に帰ってから、あなたたちの家庭問題を解決してあげるわ。今はもう遅いから、暖香に会いに行くつもりなの。一緒に来る?」

「私は行かないわ。ここに翻訳が必要な書類があるから。」高橋雅子は首を振り、席に座って書類を開きました。安藤凪は腕を支えながら横から覗き込み、その英語の翻訳を見て、目を細めました。

「雅子、これはあなたの仕事じゃないでしょう?」

「うん、翻訳部から頼まれたの。最近暇だったから引き受けたわ。私の英語はまあまあだし。」高橋雅子は顔を上げずに言いました。

「向こうからインセンティブはあるの?」

「何のインセンティブ?ただ書類を二つ翻訳するだけよ、インセンティブなんて必要ないわ。」

高橋雅子は安藤凪に向かって気にしないように笑いました。

安藤凪はため息をつきました。「雅子、あなたが親切心でやっているのはわかるけど、こういうことは最初からしないほうがいいわ。一度やると二度目もあるし、そのうちどれだけの人があなたをタダ働きさせようとするかわからないわ。私と一緒に翻訳部に行きましょう。あなたは彼らのために何件の書類を翻訳したの?」

「これで3件目よ。」

「3件目?全部同じ人から?」

「そうでもないけど...」高橋雅子はただの些細なことだと思っていましたが、安藤凪の言葉を聞いて、事態は本当に安藤凪の言う通りかもしれないと思い始めました。彼女は眉をひそめ、自分に翻訳を頼む人たちが良い言葉だけをかけて、費用の話は一切しなかったことを思い出しました。