第405章 遭遇

安藤凪は佐藤東が去っていくのを見送り、自分の手にある書類を見下ろすと、書類を届けに来たことを急に思い出した。彼女は額を手で叩き、悔しそうな表情で独り言を言った。

「しまった、見物に夢中になって本題を忘れてた」

彼女は急いで階段を上り、福井斗真を探しに行った。

幸い、安藤凪は本題を台無しにすることはなかったが、福井斗真は彼女を見たとき、何気なく尋ねた。「どうしてこんなに遅れたの?電話では既に着いたって言ってたじゃないか」

「ロビーで知り合いを見かけたからよ」安藤凪は適当に椅子を引き、両手で頭を支えながら福井斗真の前に座った。

「知り合い?どんな知り合い?」福井斗真は書類をめくる手を少し止め、顔を上げて疑問そうに安藤凪を見た。安藤凪は彼に向かって神秘的な笑みを浮かべた。「もちろんSグループの人よ。Sグループはもう他の会社とプロジェクトを契約したわ。誰の会社か当ててみて?」

「盛世グループだ」

福井斗真は口角に笑みを浮かべながらその四文字を言った。

「つまんないわ」安藤凪は口を尖らせ、失望の表情を隠さなかった。福井斗真は軽く咳払いをした。「じゃあもう一度聞いてくれ。今度は協力するから、絶対知らないふりをするよ」

彼の切実な言葉に安藤凪は噴き出して笑った。

「タイムリワインドみたいなことできるわけないでしょ。いいわよ、知ってるなら知ってるで…あれ、でもどうして知ってるの?盛世グループは昨日やっとSグループと提携したはずだし、私も最近知ったばかりなのに」

彼女は話の途中で急に違和感に気づき、頭を上げて驚いた様子で福井斗真を見た。

福井斗真も引っ張ることなく、すぐに安藤凪の疑問に答えた。「福井グループとSグループが契約を結んだことだけでなく、彼らが5対5の利益分配契約を結んだこと、さらにその契約を鈴木湊自身が直接締結したことも知っているよ」

安藤凪は一瞬、福井斗真が何でも知っていることに驚くべきか、それとも鈴木湊の愚かさに驚くべきか分からなかった。Sグループと利益を5対5で分けるなんて、他人のために嫁入り道具を用意するようなものではないか。鈴木湊は何を考えているのだろう?盛世グループの人間がなぜ同意したのだろう。