404章 全く知らなかった

翌日、安藤凪は本来会社に行くつもりはなく、家で半日休んでから午後に病院へ佐藤暖香を見舞いに行こうと決めていた。ところが昼頃、福井斗真から突然電話がかかってきた。

「凪ちゃん、私の書斎の机の上に、ファイルがあるんだ。その中に今日使う重要な書類が挟まれているんだけど、会社に持ってくるのを忘れてしまったんだ。会社まで持ってきてくれないかな。もちろん、都合が悪ければ誰かを派遣するけど。」

安藤凪は電話を受けた時、すでに書斎に歩いていて、彼女はすぐに机の上に置かれたファイルを見つけた。手に取って中身を確認しながら、電話の向こうの福井斗真に言った。

「誰かを寄越す必要はないわ。行き来するのも面倒だし、時間の無駄よ。ちょうど今から暖香のところに行くつもりだから、ついでにその書類を持っていくわ。」