第612章 一家人

「校長の下には本当に良い従業員がいますね。私たちの子供や妻をいじめておきながら、私に投資させようとするのですか？貴校は毎年従業員評価を行わないのですか？このように生徒の親によって生徒の良し悪しを定義する教師が、まだ学校で働いているのですか？」

福井斗真は藤原夕子を一気に抱き上げ、冷笑いながら校長を見た。

心の中の推測が確認され、校長は体を激しく揺らし、後ろに二歩よろめいて、転びそうになった。幸い、後ろにいた教務主任が彼を支えた。

教務主任は知っていた。校長はもう終わりだと。もし校長が本当に清廉潔白で、学校と子供たちの未来のために一心に尽くしていたならまだ良かった。

しかし校長はこの地位に就いてから、狂ったように金を集め始めた。学校の進学率が良くなかったら、誰も校長に逆らう勇気がなかったら、彼はとっくに何度も告発されていただろう。あるいは告発されても、校長には上に人がいるので恐れていなかったのかもしれない。

しかし今回、校長は鉄板を蹴ってしまった。学校内で校長を風向計とする教師たちのことを考えると、彼は理解した。校長だけでなく、彼らの教育システム全体が変わることになるだろうと。

ただ、藤原朝陽の背景がこれほど大きいとは、彼らは予想していなかった。今頃、校長は腸が青くなるほど後悔しているだろう。教導主任は自分がしてきたことを思い返し、自分も良い結末を迎えられないことを知っていた。

福井斗真が話し終えると、赤松先生と体育教師の二人は顔色が灰白になった。二人はようやく自分たちが誰を怒らせたのかを知った。そして木村辰の母親は、呆然と福井斗真を見つめていた。安藤凪を知らなくても、福井斗真は知っていた。

福井斗真は福井グループの社長であり、横浜市の納税大口企業だった。彼女の夫が教育局の副局長であっても、福井斗真のようなレベルの実業家を軽々しく怒らせることはできない。夫が突然職務停止になり調査されていることを思い出し、彼女は恐怖で震え、顔の肉が揺れた。

「福井社長、千の間違い万の間違いも全て私の息子の過ちです。夫とは何の関係もありません。どうか寛大な処置をお願いします。夫に手を出さないでください！」木村辰の母親は、急いで福井斗真の前に駆け寄り、跪いた。

福井斗真は横に移動して彼女を避けた。彼女の一礼を受けたら、寿命が縮むかもしれない。