第611章 正体を見破る

「先週の今日の監視カメラの映像を確認すれば、うちの子が木村辰のお金を盗んだのか、それとも木村辰がうちの子を誹謗中傷したのかがわかります。そうすれば、この先生が偏っているのか、公正なのかも証明できるでしょう、校長先生」

安藤凪は「校長先生」という言葉を意図的に強調した。校長の顔色が悪くなり、彼は安藤凪を不快そうに見た。この保護者はなんて厄介なんだ。しかも福井社長がここにいるから、強く出ることもできず、我慢するしかなかった。

彼は深呼吸をして、適当な理由を見つけ、いらだちを抑えながら言った。「監視カメラの映像は誰でも見たいと思ったら見られるものではありません。それに今は忙しいので、忙しさが一段落したら、私が赤松先生と一緒に監視カメラを確認し、誰が悪いのかを確認します。もし赤松先生が間違っていたなら、決して見逃しません」

「そうですか」安藤凪は皮肉げに校長を見た。校長は何故か背筋が寒くなった。校長の後ろにいた財務部長は何かを思い出したように、恐怖の表情を浮かべ、校長の袖を軽く引っ張り、何かを伝えようとした。

しかし今はそれどころではなかった。校長は頷き、さらに強調した。「もし皆があなたのように監視カメラを見たいと言えば見られるようになったら、混乱するでしょう?」

財務部長は「もうダメだ」という表情をしていた。そのとき、彼は背筋が凍るような視線を感じ、顔を上げると福井社長と目が合った。その黒い瞳に宿る冷淡さと冷酷さ、そして抑えられた怒りは、火山と氷山が衝突するように矛盾し、恐ろしかった。

福井社長、そうだ、福井社長と彼女は…

財務部長は他のことを考える余裕もなく、大声で叫んだ。「校長先生!」

彼の突然の声に校長は驚き、振り向いて不満そうに彼を見た。「何をそんなに騒いでいるんだ?」

「これは…監視カメラを見ることも不可能ではありません。この保護者の要求はまだ合理的だと思います。やはり監視カメラを確認しましょう」財務部長は必死に校長に目配せした。

この二人は敵に回せない相手だった。

それに、校長在任中、彼はかなりの悪事を働いていた。もし本当にこの二人を怒らせたら、名誉ある退職どころか、校長の座も今の年齢で終わりになるかもしれない。

赤松先生の顔色が変わり、不安げに財務部長を見た。