第622章 招かれざる客

藤原朝陽の目が輝いた。彼は感謝の言葉を上手く言えない方だったが、黒い瞳で安藤凪をまっすぐ見つめ、「ありがとう、おばさん」と言った。

「バカね、私にお礼なんて言わなくていいのよ」

安藤凪は藤原朝陽の背中を軽くたたき、彼を見送った。

……

午後、安藤凪が藤原朝陽への謝罪の品を買いに出かけようとしたとき、突然別荘に二人の招かれざる客が訪れた。安藤凪は高価な贈り物を持った二人を見て、目に暗い光を宿した。

もうこんなに時間が経っていたのか、彼女はこの二人のことをほとんど忘れかけていた。

この二人は他でもない、金石建材の林ウェリムと石社長だった。前回安藤凪に騙されて以来、彼らは姿を消していた。完全に姿を消したわけではないが、結局のところ金石建材は横浜市の建材業界を支配しようという大きな野望を持っていた。

「お二人はまさに珍客ですね。今日はどんな風が吹いて、ここまで来られたのですか」

安藤凪は皮肉げに二人を見た。石社長は顔を赤らめ、甥に怒りの視線を向けた。もし甥が最初にあんな悪知恵を出さなければ、金石建材の全資金を建材独占に投じることもなかっただろう。今や倉庫には高価な建材がどんどん増えていき、彼は頭を抱えていた。

林ウェリムの心も苦しみで一杯だった。福井グループが開発を急いでいると聞いていたのに、開発を急いでいるなら建材が必要なはずだ。彼らが高級建材を独占すれば、福井グループは素直に彼らの元を訪れ、以前騙し取られたお金を素直に吐き出すはずだった。

しかし、福井グループは全く急いでいる様子がなかった。この数ヶ月間、工事を始める兆候も見られなかった。彼らは焦っていなくても、金石建材は大変な状況だった。

「安藤社長、実は前回のことについて謝りに来たんです。あの時は私の甥が無礼を働き、安藤支配人を怒らせてしまいました。確かに最終的に高額契約を結んだのは損ではありませんでしたが、ご存知の通り、私も困っていて……」

石社長は持ってきた贈り物を置き、手をこすりながら小声で説明した。安藤凪はそれを聞いて、心の中で冷笑した。彼女は石社長が今日来た理由をよく知っていた。

要するに市場のプレッシャーが大きすぎて、抱えている建材が多すぎ、流動資金がないということだ。このまま建材を独占し続けるのは、ほぼ不可能だろう。