第621章 怒り

安藤凪は両手が水で濡れていて、急いでソファに近づき、福井斗真が苦労して不器用に子供をあやしているのを見た。

「どうしたの?どうして急に泣き出したの?」

福井斗真も少し混乱していた。さっきまで全て順調で、ちょうど絵本を読んでいたところなのに、突然泣き出したのだ。安藤凪だけでなく、彼自身もびっくりしていた。

「わからないよ、さっきまで大丈夫だったのに」

「もしかして、どこか体調が悪いのかしら。そうでなければ、なぜ突然泣き出すなんてことがあるかしら」

安藤凪は心配そうに饅頭ちゃんを見つめた。そのとき、饅頭ちゃんは涙目でママを見て、小さな太い腕を伸ばし、ママに抱っこしてもらおうとした。まるで福井斗真のところで大きな仕打ちを受けたかのような様子だった。

福井斗真は思わず歯ぎしりし、心の中で「このちびすけめ」と呟いた。しかし、饅頭ちゃんの体調が悪いのではないかと心配していた。家庭医をもう一度呼ぶべきか考えていたとき、安藤凪に抱かれた息子が泣き止んだことに気づいた。