第019章 私にキスしてほしいなら、次は直接言って

電話の向こう側。

秋田由貴子は少し困ったような様子で、躊躇いながら尋ねた。「愛さん、上野さんが嫌がったら……」

「卓夫が嫌がるとでも思ってるの?言っておくけど、秋田結が卓夫にまとわりついているのよ。すぐに彼女を呼び戻して、それから『一目萬年』の音声ドラマに出させないで」

三井愛は秋田結が自分より優れることを許さなかった。

彼女は思った。

秋田結には自分と同じ脚本に登場する資格などない。

彼女はすでに秋田結を女優から裏方の声優へと追いやった。

さらにテレビドラマの声優から、音声ドラマの声優へと追いやった。

しかし、それでも彼女は満足していなかった。

彼女が望んでいたのは。

秋田結がその業界から完全に離れることだった。

上野卓夫の世界から出て行くこと。

そして伊藤明史とも一緒にいることを許さない。