葉都。
上野グループ社長室。
特注の本革ソファに座り、上野卓夫は淡々と三井忠誠が招待状を取り出してテーブルに置くのを見ていた。
眉を少し動かし、彼は目の前のグラスを手に取り、口元を緩めて尋ねた。「結婚?」
三井忠誠は首を振った。「明彦が言うには、まずは婚約して、来年の春に結婚式を挙げるそうだ。この数ヶ月で結婚式の準備をするのにちょうどいいらしい」
上野卓夫は物憂げに「ふーん」と返事をしただけで、何にも興味を示さなかった。
三井忠誠は彼の冷淡さと孤独を見て、眉をしかめた。
少し躊躇してから尋ねた。「まだ結ちゃんの消息はないのか?」
「結ちゃん」という言葉を聞いて、水を飲んでいた上野卓夫はまぶたを少し持ち上げて彼を見た。
「ない」という言葉が彼の薄い唇から漏れた。
突然、場の空気が冷え込んだ。