第311章 彼女が自ら言った

病院の病室にて。

上野卓夫は上野お婆さんのベッドの前にしゃがみ込んでいた。

広くて温かい大きな手で、上野お婆さんの皮だけのように痩せこけた手を優しく握っていた。

穏やかで低い声で、「お婆さん、やっと目を覚ましたね。」

「卓夫。」

上野お婆さんの目は今回の昏睡前よりも更に濁っていた。

しかし、それでもベッドサイドにいる上野卓夫をすぐに認識した。

「ここにいるよ。」

「結ちゃんは?私が眠っている時、彼女が曾孫と曾孫娘を連れてきて見せてくれるって言ってたような気がするわ。」

上野お婆さんは本当だったのか夢だったのかはっきり覚えていなかった。

それが自分の見た夢なのかどうか。

でも彼女は曾孫と曾孫娘に一目会いたくて、だから必死に目を覚まそうとしていた。

体があまりにも弱っていて、一言話すのにも何度も途切れながらやっと言い終えた。