バルコニーのドアがこの時に開いた。
上野卓夫の長身のシルエットが外から入ってきて、三井忠誠が帰ろうとしているのを見た。
彼はもう引き止めなかった。
ただ言った、「木村峰に送らせるよ」
「ありがとう」
三井忠誠はぎこちなくお礼を言った。
これだけのことが起きた後では、彼はもう以前のように無知でいることはできなかった。
上野卓夫は彼がこの数日の出来事を消化する時間が必要だと知っていた。
そして、三井康隆が彼に与えた傷も。
薄い唇を軽く噛み、彼はソファの前に歩み寄り、秋田結に言った、「結ちゃん、ちょっと待っていて、忠誠を階下まで送るから」
「いらない、自分で行くよ」
三井忠誠は上野卓夫の好意を断った。
そして言った、「結ちゃんは今夜きっと驚いただろうから、彼女をよく面倒見てやってくれ、俺は行くよ」