第418章 あなたが私にキスするか、私があなたにキスするか…(六千字)

上野卓夫の足が止まった。

振り返って半開きのドアの個室を見た。

中に座っている人が、さっき彼を押しのけて逃げた秋田結だと分かった。

個室内の会話を聞いて、彼の深い瞳に鋭い光が走った。

薄い唇を少し引き締めた。

立ち止まることなく、階下の駐車場へ行って彼女を待つことにした。

「あの...お二人とも。」

個室内。

秋田結は混乱から立ち直り、冷静に言った。「残念ですが、私は既婚者で、しかも子供が二人います。」

「え...本当?」

松井さんは目を丸くした。

冨井明嵐も驚いていた。彼女の息子は秋田結を数年知っているのに。

しかし息子から秋田結に二人の子供がいるとは聞いていなかった。

「はい。」

秋田結の顔に薄い笑みが浮かんだ。

断りの意思は既に明らかだった。

しかし、彼女が全く予想していなかったのは。