彼の能力は、疑う余地がない。
湯川大助は口元を笑みで歪めた。
その笑顔はあまり真実味がなく、声さえも冷淡だった。
「大したことではありません、結ちゃんは私の友人です。」
伊藤旭昇の言葉は率直だった。
彼は上野卓夫の深い淵のような目を見つめ、続けた。「結ちゃんが帝都に来たのは、私にも一部責任があります。」
「...」
上野卓夫は目を細めた。
何も言わなかった。
湯川大助は独り言のようでもあり、説明のようでもあった。
「彼女は中野教授にDNA比較をお願いしたいと言っていました。ちょうど、中野教授も結ちゃんの熱心なファンで、彼女に一度会いたがっていたんです。」
だから、彼は結ちゃんに自分で来るように言ったのだ。
秋田結は本当に来た。
一部の理由は、出張の仕事のためだったが。
「三井康隆が帝都で私の招いた客に手を出すなら、彼は湯川大助の敵だ。」