森川萤子は長い間立っていて、やっと勇気を出してドアベルを鳴らした。しばらくすると、カチッという音が聞こえ、鉄の門が開いた。
これは萤子が白園を訪れるのは初めてではなかった。
白園の外側には白いバラが植えられていた。それは白井優花が最も愛する花で、当時、久保海人は優花を喜ばせるために、自らブルガリアへ行ってバラの品種を選んだ。
空輸で国に持ち帰った後、彼は自ら土を耕し植え、普段の手入れも自分自身で行っていた。
萤子は彼と知り合って何年も経つが、誰かのためにここまで心を尽くす姿を見たことがなかった。彼女はまた初めて知った、久保海人が誰かを愛するとき、こんなにも情熱的でロマンチックになれることを。
強風が吹き荒れ、庭一面の白いバラが風に揺れ、花の香りが鼻をつく。
しかし萤子はこの庭一面に咲く白いバラが少し不気味に感じた。まるで墓地の小さな白い花のように、久保海人と白井優花の間の骨身に染みる愛情を埋葬しているかのようだった。