片桐美咲は病気で弱々しくベッドに横たわり、白い小さな顔は紅潮し、少女の眉目は愛欲に潤された後の艶やかさを漂わせていた。
昨夜……
昨夜のことを思い出すと、彼女は恥ずかしさのあまり布団の中に潜り込んだ。
今思い返しても、心にはまだ甘さが残っていた。彼女は顔を上げ、椅子に掛けられた男性用のスーツを見た。
彼女は軽く唇を噛み、起き上がってスーツを手に取った。どういう心理からか、彼女は頭を下げてスーツの匂いを嗅いだ。
あの人の体の匂いと同じで、タバコとミントが混ざった大人の男性の香り、清々しく良い香りだった。
そのとき、ドアがノックされた。
片桐美咲はびっくりして、急いでスーツを布団の中に隠した。
「誰?」
ドアの外から片桐陽向の低い声が聞こえた。「俺だ。」
片桐美咲は心が慌て、急いでベッドから起き上がって座り直した。片桐陽向に異変を気づかれないよう、髪をかき上げて首筋のキスマークを隠した。