046 捕らえられた芳心

片桐美咲は病気で弱々しくベッドに横たわり、白い小さな顔は紅潮し、少女の眉目は愛欲に潤された後の艶やかさを漂わせていた。

昨夜……

昨夜のことを思い出すと、彼女は恥ずかしさのあまり布団の中に潜り込んだ。

今思い返しても、心にはまだ甘さが残っていた。彼女は顔を上げ、椅子に掛けられた男性用のスーツを見た。

彼女は軽く唇を噛み、起き上がってスーツを手に取った。どういう心理からか、彼女は頭を下げてスーツの匂いを嗅いだ。

あの人の体の匂いと同じで、タバコとミントが混ざった大人の男性の香り、清々しく良い香りだった。

そのとき、ドアがノックされた。

片桐美咲はびっくりして、急いでスーツを布団の中に隠した。

「誰?」

ドアの外から片桐陽向の低い声が聞こえた。「俺だ。」

片桐美咲は心が慌て、急いでベッドから起き上がって座り直した。片桐陽向に異変を気づかれないよう、髪をかき上げて首筋のキスマークを隠した。