昨日、片桐陽向が車に乗り込んだ後、一言も発せず、顔色は非常に険しかった。
彼と江川源は怖くて大きな息もできず、自分の息づかいさえも間違いになるのではないかと恐れていた。
江川淮は昨日のその様子を見て、自分が推している邪教CPが終わりそうだと感じた。
森川萤子は指をキーボードの上で踊らせながら、ちらりと彼を見て、「今日は出かけないの?」と尋ねた。
「昼間は出かけないけど、夜はボスが接待があるんだ。確か加藤夫人が開くパーティーで、東京の未婚の令嬢たちが全員招待リストに載っているらしい。ボスのために縁談を探しているみたいだよ」
森川萤子はキーボードを打つ手を一瞬止め、江川淮がこそこそと視線を向けてくるのを見た。
彼女は平然と入力を続けながら、「お見合いはいいことね、片桐社長も結婚して子供を持つ年齢だし」と言った。