153 機密文書に指定

森川萤子は初めてこんなにも無力だと感じた。彼女は林田隊長と暫く睨み合った後、最終的に妥協して立ち去った。

森川萤子が出て行くやいなや、渡辺ちゃんが林田隊長のオフィスのドアをノックし、猫のように身をかがめて中に滑り込んだ。

「隊長、森川さんって何者なんですか?さっき内部システムで調べたら、彼女の情報は機密ファイルに指定されていて、見ることができないんです。」

林田隊長は眉をひそめた。「彼女の情報が機密ファイルになっているって?」

「はい、こんな状況は初めてです。彼女は何か大物なんでしょうか?」渡辺ちゃんは好奇心いっぱいに林田隊長を見つめた。

林田隊長は窓際に歩み寄り、警察官に連れ出される森川萤子を見ながら、厳しい表情を浮かべた。

森川萤子は一体何者なのか?

なぜ公安システム全体が彼女の情報を機密ファイルに指定しているのか、彼女を保護するためなのか?

森川萤子は交番の外でしゃがみ込み、買った冷麺を路上で食べていた。

丸一日何も食べていなかったので、今は何を食べても極上の味に感じられた。

先ほど交番で何も聞き出せなかった落胆はすべて食欲に変わり、一皿食べ終わるとまた一皿買いに行った。

二皿の冷麺を平らげると、喉が詰まりそうになったところで、横から一本のミネラルウォーターが差し出された。

振り向くと、真面目で厳格な林田隊長が目の前に立っていた。彼女は立ち上がり、「隊長」と声をかけた。

林田隊長は水を彼女の方に差し出し、森川萤子はお礼を言って受け取ったが、何度も回しても開けられなかった。

林田隊長は再び受け取って開けてあげた。彼は言った。「旅の疲れが見えるね、ちょうど国境に着いたところ?」

「はい」森川萤子は水を受け取って二口飲み、喉に詰まった異物感が消えた。「私が行方不明になったあの一年、両親は何度も国境を行き来しました。父も私を探しに来る途中で亡くなりました。隊長、私が国境に来たのは、子供の父親を見つけるためでもあり、父の死の真相を探るためでもあります。」

林田隊長は彼女を見つめた。「森川さん、あなたの気持ちはわかります。しかし時は流れ、手がかりは時間の流れの中に消えてしまいました。今から真実を探すのは難しいでしょう。」

「じゃあ何もなかったふりをして、耳を塞いで目をつぶって生きていけというんですか?」森川萤子は強い口調で問い詰めた。