康田麗子が受付を済ませて戻ってくると、太った医者はもう行ってしまっていた。彼女は森川萤子の隣に座った。
「さっきの医者、知り合い?」
森川萤子は首を振った。「知らない」
「でも、結構長く話してたから、知り合いかと思った。今は少しマシになった?」康田麗子は彼女の顔色が車の中にいた時ほど青白くなく、冷や汗も出ていないのを見て、少し安心した。
森川萤子:「うん、今はだいぶ良くなった。温かい水が飲みたい」
康田麗子は受付票と身分証を彼女の手に渡し、案内カウンターへ行って温かい水を一杯もらってきた。
森川萤子はそれを受け取り、半分ほど飲むと、氷のように冷たかった胃がやっと少し楽になった。
「行こう、医者に診てもらおう」康田麗子は森川萤子を支えて上の階へ向かった。
森川萤子は手を振って、「もう大丈夫だから、医者に診てもらう必要はない」と言った。
「せっかく受付したんだから、無駄にしないで。行こう行こう、心音を聞いてもらうだけでもいいから」
康田麗子はさっぱりとした性格で、言ったとおり森川萤子を医師の診察室へ引っ張っていった。
医師の前で一通り診察を受けたが、医師も原因がわからず、結局はうやむやになった。
病院を出ると、森川萤子の顔色は元に戻り、まるでさっきまで冷や汗を流して弱っていた人が彼女ではなかったかのようだった。
二人は病院の正面玄関に立ち、連絡先を交換した。康田麗子は言った。「あなたはまだ数日ここにいるの?明日仕事が終わったら、グルメ通りに案内できるけど」
森川萤子は残念そうに微笑んだ。「仕事があるから、東京に戻らないといけないの。あなたが東京に来る時は教えてね、空港まで迎えに行くから」
「もうすぐ帰っちゃうの?ご飯もまだ奢れてないのに」康田麗子はとても残念そうだった。
森川萤子は微笑んで、「これからも長い付き合いになるでしょ。今度東京に来た時に奢ってくれても同じよ」
「もう、あなたったら」康田麗子は彼女を軽く押し、別れを惜しむように彼女の腰を抱きしめた。
「本当は支社にも案内したかったのに。今の支社は私たちがここに来た時よりずっと大きくなったのよ」
森川萤子は心が動き、夕日を見て、「今から行っても同じよ、行きましょう」と言った。
康田麗子は彼女の思い付きに驚いたが、二人がタクシーに乗ってから気づいた。