173 美男は遠くから眺めるだけ

森川萤子はスポーツウェアに着替えて出かけると、ちょうど起きたばかりの深谷美香とばったり会った。

彼女は眠そうな目で萤子を見て、「昨夜何時に帰ってきたの？」と尋ねた。

森川萤子は唇を噛み、少し言いづらそうにした。

深谷美香は彼女の表情を見ただけで、昨夜帰ってこなかったこと、誰と過ごしていたのかを察した。

「あなたと片桐社長の頻度、ちょっと高すぎじゃない？彼もあなたのことを少しは気遣ってあげればいいのに」

森川萤子はここ数日、祝賀会の準備で忙しく、朝早くから夜遅くまで働き、睡眠時間が足りないのに、上司からは別の形で搾取されていた。

森川萤子は顔を赤らめ、「まだ寝るの？起きるなら朝食を食べに来て」と言った。

深谷美香は森川萤子を見つめた。睡眠不足にもかかわらず、彼女の顔は生き生きとしていて、疲れた様子は全く見えず、むしろ潤いに満ちているようだった。