森川萤子は思わず首を振った。「あなた、以前に家族寮で大騒ぎしたことを忘れたの?これは敵に八百の傷を与えても、自分も千の傷を負うようなもの。必要ないわ」
橋本月香は深谷美香よりずっと理性的だった。「私は森川萤子の言うとおりだと思うわ。前回あなたがあんなに騒いでも、片桐家はその再婚した新しい婿を受け入れたじゃない。結婚式では絶対に私たちが邪魔をしないように警戒するはずよ」
「じゃあどうするの?あの老いぼれ犬野郎が第二の春を迎えるのをただ見ているだけ?妻も子供も温かい家庭があって、仕事も順調なんて?」深谷美香は不満そうに頭を掻きむしった。
森川萤子は笑いを堪えられなかった。「なんだか私より怒ってるみたいね」
「萤子、それなら片桐家の三男を落としちゃえば?久保海人があの犬野郎が今後あなたを小おばさんと呼ばなければならないと思うと、すっきりするわ」深谷美香は目をパチパチさせながら森川萤子に悪知恵を授けた。