森川萤子は小区を出た後、市内を何周か回り、誰も尾行していないことを確認してから、タクシーで木村家へ向かった。
木村家は郊外にあり、タクシーが進むにつれて、目の前の景色はどんどん荒涼としていった。
周辺の広大な土地は建設会社に買収され、新しいCBDを建設する予定だった。
多くの荒地は緑色のフェンスで囲まれ、中で何が建設されているのか見えないが、それによって周囲はより人気のない場所に見えた。
日が暮れるにつれて、辺りはますます暗くなり、森川萤子の心に不安が募った。
木村家がこんな寂しい場所に住んでいるなんて、あたり一面が薄気味悪い。
運転手は萤子の不安を察したようで、「最近、この市では都市計画を進めていて、この一帯は取り壊して観光プロジェクトにする予定なんです」と言った。
「なるほど、だから人気がないように見えるんですね」と萤子は言った。
「あなたは外から来た人ですね。訛りを聞くと北の方の人のようですが、親戚を訪ねに来たんですか?」と運転手は彼女と雑談した。
萤子は首を振って、「いいえ、出張で来ました。あの、この後、路地の入り口で少し待っていただけませんか?ちょっと物を取ってすぐ戻ります」
萤子は物を取った後、市内に戻るタクシーが見つからないことを心配し、また木村家の外に久保義経の部下が見張っているかもしれないと恐れていた。
運転手がいれば、彼らも多少は遠慮して、路上で強奪するようなことはしないだろう。
運転手は彼女がとても臆病だと思い、笑いながら「いいですよ、ちょうど私も市内に戻るところで空車になるので、あなたを乗せて帰れば無駄にならないし」と言った。
二人が少し話している間に、車は小さな町に入った。
この時間帯には家々の明かりが灯り、道端では子供たちが遊んでいて、さっき通ってきた時ほど寂しくはなかった。
萤子は人を見て少し安心し、車は木村家の前で止まった。
萤子は車を降り、表札番号を確認して、庭の門を開けて入ると、何かにつまずきそうになった。
彼女はびっくりして後ろに二歩跳びのいたが、地面に倒れていたのは物を置く棚だとわかった。
彼女は携帯を取り出して懐中電灯をつけ、光が届く範囲は散らかり放題だった。
おそらく木村お母さんが去った後、誰かが「家宅捜索」に来たのだろう。