209 苦労を少なく

森川萤子は小区を出た後、市内を何周か回り、誰も尾行していないことを確認してから、タクシーで木村家へ向かった。

木村家は郊外にあり、タクシーが進むにつれて、目の前の景色はどんどん荒涼としていった。

周辺の広大な土地は建設会社に買収され、新しいCBDを建設する予定だった。

多くの荒地は緑色のフェンスで囲まれ、中で何が建設されているのか見えないが、それによって周囲はより人気のない場所に見えた。

日が暮れるにつれて、辺りはますます暗くなり、森川萤子の心に不安が募った。

木村家がこんな寂しい場所に住んでいるなんて、あたり一面が薄気味悪い。

運転手は萤子の不安を察したようで、「最近、この市では都市計画を進めていて、この一帯は取り壊して観光プロジェクトにする予定なんです」と言った。