西村绘里と甘奈はバスに1時間乗って、手を繋いでようやく二人で暮らすアパートへと戻ってきた。
団地は三環の外側にあり、家賃は安く、環境も悪くなかった。質素ではあるが、2LDKで母娘二人は温かく暮らしていた。
4年前なら、西村绘里は自分のような名家の令嬢がこんな貧しい場所に住むことになるとは想像もできなかっただろう。
わずか4年の間に、すべてが変わってしまった。知らない男に体を奪われ、母親は行方不明、父親は控訴審で敗訴して判決が確定し、そばには子供ができ、さらに結婚という束縛まで背負うことになった。
西村绘里が少し考え込んでいるのを見て、甘奈は小さな唇を尖らせ、愛らしい瞳に笑みを浮かべた。
「ママ、今夜のごはん、なに?」
「うーん、イケメンを眺めてるだけで、お腹いっぱいなんじゃない?」
小さな娘は、西村絵里の冗談にちょっと困った顔をして、唇を噛んだ。
「んーん、やっぱり食べる!ひとつは心のごはん、もうひとつはもっと可愛くなるためのごはんだもん!」
「ママ〜、こんなに可愛い私にご飯作ってくれないの?」
西村绘里:「……」
しょうがない、甘奈ちゃんの完全勝利だ。
「うん、いい子だからソファに座っていて、私が料理を作るわ」
「やったー」
西村绘里は口元を緩め、袖をまくって台所へ向かった。
……
タンタンはちっちゃな足をソファの上に投げ出して、音楽番組を夢中で観ていた。大好きなHeySayJumpが画面に登場した瞬間、ぱっと顔を輝かせて、思わず「きたーっ!」と声を上げた。
「すごい!いつまでも応援してるよ!」
「あぁ、パパはいつ現れるのかな。私はこんなに可愛いんだから、パパはきっとアイドルたちよりもかっこいいはず」
うーん、パパ、甘奈はあなたに会いたいよ。
ママが言うには……パパはアイドルみたいにかっこいいんだって。
……
母娘が夕食を終えると、西村绘里は甘奈を抱えて浴室に入り、お風呂の後、小さな子に服を上げさせ、お腹にインスリンを注射した。
甘奈が痛みで顔を青ざめさせ、唇を震わせる様子を見て、西村绘里は胸が引き裂かれるような思いだった。震える手を必死に抑えながら、注射を完了させた。
「へへへ、ママ、全然痛くないよ……」
「えらいね……」
注射は大人でも耐えるのが難しいのに、彼女は毎回、笑いながら痛くないと言う。
西村绘里は思わず目を赤くし、口元を緩めた。
「今日就職が決まったから、明日はHeySayJumpのポスターをプレゼントするね!」
「ありがとう、ママ」
西村绘里は甘奈の頬にキスをし、子供部屋に連れて行き、抱きしめながら寝かしつけた。
「ママ……愛してる」
「いい子ね、私も愛してるよ」
西村绘里は娘が自分の腕の中で深く眠りについたのを見て、額にキスをした。
妊娠初期に次々と打撃を受けたため、小さな子はお腹の中でずっと調子が良くなかった。
甘奈は生まれた時から1型糖尿病を患っていた……
だから、毎日高価なインスリンを注射しなければならなかった。
2年前、黒田真一から二千万を受け取ったのは、父親の控訴審のためだけでなく、実は甘奈の病気のためでもあった。
糖尿病はずっと贅沢病と言われ、黒田真一の二千万円はすでに使い果たし、大学4年の時には既にアルバイトをしながら勉強していた。
甘奈のために、自分は黒田グループで正社員にならなければならない。そう考えると、西村绘里はそっと立ち上がり、電気を消して自分の寝室へ向かい、東栄インターナショナルの設計図のために引き続き懸命に働いた。
……