第20章 藤原海翔登場、お気に入り登録をお願いします(1)

西村絵里はお昼ご飯を食べていなかったため、空腹でお腹がぐうぐう鳴り、黒田真一と言い争う気力もなかった。

三年間の婚姻契約、名ばかりで実体はなく、他人同然だった。

しかし結局のところ、自分の配偶者欄には黒田真一の名前が書かれている……

彼女は馬鹿ではなく、黒田真一が自分に対する時、その黒い瞳は水のように静かで、深く読み取れないものの、普通の上司と部下の関係よりは少し曖昧だが、決して男性から女性への愛情ではないことがわかっていた。

自分は黒田奥さんだから、たとえ名ばかりでも、法律上は成立している。男の独占欲、浮気されたくないという気持ち。

西村絵里は軽く唇の端を引き上げ、小声で言った。「わかりました、黒田社長。もし他に用がなければ、私は先に失礼します。」

「ああ……」

黒田真一は女性の去っていく背中をじっと見つめ、薄い唇を引き締め、長い指で目の前の机を叩きながら、何かを考えているようだった。

しばらくして、黒田真一の首席特別補佐である村上秘書が丁重にドアをノックして入ってきた。

「社長、先ほど監視カメラを確認したところ、矢崎凌空はすでに取締役会長夫人、いえ、山口琴子に内密に報告していました。あなたのところで不当な扱いを受けたと訴えています。」

黒田真一の細長い黒い瞳が少し細められ、危険な雰囲気が一瞬過ぎった。

黒田真一が口を開かないのを見て、村上秘書は続けた。「あなたは黒田奥様の、いえ、西村さんの手を借りて、矢崎凌空を成功裏に抑え込みました。山口琴子に対しても威嚇効果があったと思います。会社内に彼女の耳目はもうあまり残っていません。今後、機会を見つけて一掃できるでしょう。」

山口琴子、名目上の継母……

かつて結婚を契機に黒田家から20パーセントの株式を手に入れた時、山口琴子はずっと黒田グループに対して悪意を抱いていたので、動き出すのは当然だった。あちこちにスパイを配置し、自分の息子のために道を整えていた。

矢崎凌空は、山口琴子が配置したスパイの一人だった。当初、西村絵里のデザイン図を見た時、この黒田奥様は矢崎凌空に匹敵すると感じていた。

事実、自分は人を見る目を間違えていなかった。

自分が西村絵里の作品を選んだことで矢崎凌空を怒らせ、矢崎凌空は西村絵里に様々な嫌がらせをし、西村絵里は豚を装って虎を食らう……