第19章 黒田さんの過分なお褒めの言葉に感謝します(2)

「でも、最初に黒田グループで働くことを選んだとき、黒田社長は賞罰がはっきりしていると聞いていました。」

西村绘里は話しているうちに、目が赤くなり、涙が目に溜まって回っていた。

この真摯な様子、西村绘里は全身が演技だった。

黒田真一は女性の赤くなった目と向き合い、黒い瞳に賞賛の光が閃いた。

この西村绘里は、黒を白と言い、同時に正義感あふれる口調で不満を述べる、まさに羊の皮を被った狼の最高の技だ。

賢く、愛らしい……

矢崎凌空は顔が土気色になった。最初は西村绘里がただ狐のような顔をしているだけだと思っていたが、まさか罠を仕掛け、口も達者だとは。

「うん、矢崎凌空、謝れ。」

黒田真一はたった二言しか言わなかったが、その言葉は冷たく刺すような、言い表せない威圧感があった。

矢崎凌空は歯ぎしりして、不機嫌そうに言った：「西村绘里、今回は本当にごめんなさい。」

西村绘里は唇を少し曲げた：「大丈夫です。」

「三ヶ月分のボーナスを没収する。次にまたこのようなことがあれば、矢崎凌空、デザイン部の部長の座を明け渡すことになるぞ。」

「はい、社長、分かりました。」

「うん、出て行け。デザイン図は置いていけ。それと西村绘里、君は残ってくれ。」

矢崎凌空は黒田真一の厳しい言葉と強大なオーラに怯え、全身が震えていた。反論する勇気もなく、西村绘里を睨みつけてから、急いで部屋を出た。

西村绘里は唇を噛んだ。心の中では大満足とまではいかないが、一矢報いたという気持ちだった。

元々彼女にコーヒーをかけられ、敵意を解消しようとしたのに、女は更に悪化させた。だから、適切な反撃も必要だった。自分が簡単に虐められる相手ではないことを教えるために。

因縁が出来てしまった以上、短期間は矢崎凌空も自分に意地悪をする勇気はないだろう。

ただ、なぜ黒田真一は自分だけを残したのだろうか？

「黒田社長、何かご用でしょうか？」

「西村绘里、君のこのデザイン作品はなかなかいい。選ばれるだろう。」

西村绘里の表情が少し変わり、男性の深遠な黒い瞳と向き合い、眉を上げて尋ねた：「社長、どういう意味ですか？」