第32章 間接的なキス(1)

二人の男性の間に立ち、西村絵里は極度のプレッシャーを感じ、心臓がほとんど喉元まで飛び出しそうだった。

「先に仕事に行きます。黒田社長、藤原社長、お話しください。」

言い終わると、西村絵里は意を決して、背筋をピンと伸ばし、ホールの方向へ歩き出した。振り返ることなく、トラブルの場から遠ざかった。

藤原海翔は西村絵里の去っていく後ろ姿を見つめ、熱い好意を隠さず、自ら口を開いた。

「東栄インターナショナルのプロジェクトが絵里ちゃんのデザイン案を選んだなんて、黒田社長は目が高いですね。」

黒田真一の漆黒の瞳には意味深な光が揺れ、口角をわずかに引き締めた。

「黒田グループは常に人材を適材適所に配置していますよ。ただ、藤原様に一言忠告しておきます。藤原旦那様が、あなたが既婚女性に執着していることを知ったら、その結果は想像したくもないでしょうね。」