第52章 あなたのために一度だけ例外を作る(1)

トーテムホールにて:

人々は目を見張りながら、黒田真一が西村絵里に高価なダイヤモンドリングをはめるのを見ていた。このような高価な神像の目は、一目見るだけでも大きな幸運とされているのに、まして身につけ、その持ち主になるとは。

西村絵里が小さな手を引っ込めようとしたが、次の瞬間、黒田真一は直接ダイヤモンドリングを指にはめた。

西村絵里:「……」

最初は、黒田真一が適当に用意したものだと思っていた。

まさか自分の左手薬指のサイズにぴったり合うとは思わなかった。

偶然なのか、それとも男は前もって準備していたのか?

西村絵里は美しい瞳を見開き、考え込んだ。黒田真一の表情は読み取りにくく、捉えどころがなかった。

「黒田奥さんの指は細くて、つけるととても美しいわね」

「そうね、やっぱり黒田社長は人を大事にして、お金を惜しまないわね」

女性たちは作り笑いを浮かべながら、思う存分に褒め称えた。左手薬指から伝わる冷たい感触に、西村絵里はやや放心状態になった。

黒田真一は西村絵里の小さな手を自分の手のひらに包み込み、黒い瞳には確信に満ちた自信が宿っていた。「女性は、大切にするものだ」

西村絵里:「……」

男が建前を言っているのはわかっていても、思わず心が少し動いてしまった。

薬指のダイヤモンドリングは、まるで千キロの重さがあるかのようだった。男の手のひらは熱く、とても温かい。

結婚指輪をはめることで、西村絵里は自分と黒田真一が名目上は夫婦であることを実感した。

……

周りの人々の羨ましそうな声を聞きながら、西村絵里の口元には終始さりげない笑みが浮かんでいた。

芝居をしているだけ、真剣になったら負けだ。

サイズが合うのは、おそらく偶然だろう。

もし偶然でないなら、この男は思慮深く、疑われないように細部まで完璧に準備したのだろう。

「黒田社長、もう遅いので、先に帰りたいのですが、明日も仕事がありますし……」

付き合いもほどほどに、西村絵里は自ら辞意を告げた。

「ああ、送るよ……村上秘書、後は頼む」

「はい、社長」

西村絵里:「……」

「いいえ、私は一人でも大丈夫です……あっ……」

西村絵里が数歩歩こうとしたが、黒田真一に支えられていたからこそ歩けていたのであって、実際に自分で歩こうとすると、足の裏が針で刺されるように痛かった。