第120章 黒田奥様は西村絵里2更(1)

西村絵里の顔色は恐ろしいほど青ざめていた。黒田真一の長身が自分の横に歩み寄るにつれ、心臓が半拍飛び跳ねた。小さな手で服の裾を握りしめ、爪がほとんど手のひらに食い込むほどだったが、彼女自身はそれに気づいていなかった。

10億円。

黒田真一、あなたは一体何がしたいの?

まさか二人の関係を公表するつもりじゃないでしょうね。

その可能性を考えただけで、西村絵里は全身が抑えきれないほど震えた。

もし自分がこれから「黒田奥さん」という三文字を冠せられるようになったら、それは間違いなく自分にとって地獄の深淵だ。おそらくこの先の人生をずっと名家の水火の中で生きていくことになるだろう。

自分は甘奈と一緒に平凡な普通の人として生きていきたいだけなのに。それだけなのに。

……

黒田真一は気ままに西村絵里の横に歩み寄り、薄い唇がかすかに上がった。隣の小娘が激しく震えているのを察知し、墨のような瞳を細めた。

西村絵里が今恐れているのは、自分が二人の夫婦関係を公表することだろう。

仙台市の女性たちは皆、黒田奥さんになりたがっているのに、西村絵里だけは拒絶し、不本意で、二人が結婚したという知らせを必死に隠そうとしている。

黒田真一は初めて自分の魅力の所在を疑問視した。

なぜなら、西村絵里は自分にとって確かに特別な存在だからだ。

……

香坂悠生と藤原海翔もやや驚いていた。特に藤原海翔は、百思しても理解できなかった。もともとは自分と香坂悠生の間の競り合いだったのに、この黒田真一はどうして介入してきたのだろうか?

司会者は多くのオークションを主催してきたが、無名のデザイナーの作品が10億円という天価で落札されるのを目の当たりにしたのは初めてだった。

10億円の落札価格があれば、この上条涼太というデザイナーは、きっとこれから風のように勢いづくだろう。

この黒田さんは、上条涼太というデザイナーを売り出そうとしているようだ。

「黒田さんはすでに10億円を提示されました!黒田さんは仙台市の舵取りとして、さすがに大胆な出費ですね。」

黒田真一はそれを聞いて薄い唇を少し上げ、その薄い唇の端が特に魅惑的に見えた。

藤原海翔が先に口を開いた。「黒田さん、なぜ寅虎にそれほど大きな興味をお持ちなのですか?」