堇顔

表向きだけの結婚契約――有効期限は3年。
形だけの夫婦関係、まるで他人同然。
そして契約終了を目前に、彼女は新たな職場に就職する。まさか、その上司が夫だった。
「すみません。邪魔するつもりはありません。ただ、黒田グループを選んだのは……お給料が良かったからです」
冷静な態度で履歴書をめくる男は、ふと問いかけた。
「西村絵里、19歳のとき、どうして1年間休学していたの？」
「……大学1年の時、家庭に少し事情がありまして」
「そう？じゃあ、なぜ下腹部に傷があるの？」
「……虫垂炎です」
その瞳は、どこまでも深く、彼女の心を見透かすようだった。
3年の契約が満了し、彼女は痛みを堪えながら、静かに、そして毅然と背を向けて離婚届にサインした。
けれどその後も、なぜか元夫はしつこく付きまとってきて……
さらには、彼女の恋のチャンスまで次々と潰してくる。

黒田さん、結婚して見ませんか～

彼はキスで返事を代わりにしたのだ。


西村绘里はもともと手を上げて黒田真一の胸を押し、彼の熱いキスから逃れようともがいていたが、今回は小さな手を上げたものの、力なく下ろしてしまった。


黒田真一の深いキスに身を任せた。


しばらくして、黒田真一はようやく腕の中の頬を赤らめた女性を放した。彼女の赤い唇は潤いを帯び、魅惑的な輝きを放っていて、非常に魅力的だった。


男なら誰でも、西村绘里のこのような姿に夢中になるだろう。


思わず一口一口と彼女を飲み込みたくなるほどだ。


黒田真一は大きな手を伸ばして西村绘里の髪を撫で、かすれた声で言った。「醜くない、恐ろしくない、とても美しい。もし傷跡を消したくないなら、そのままでいいよ」


第273章 腹部の帝王切開の傷跡1更(5)

第273章腹部の帝王切開の傷跡1更(5)