思いがけず、こんなに早く話が終わるとは。
西村絵里は口元に微笑みを浮かべ、自ら切り出した。「もう行ってもいいですか」
「ああ、車に乗ろう」
「はい」
すでに誰かが黒田真一のキャデラックを持ってきており、黒田真一は運転席に座り、西村絵里は急いで助手席に座った。
優雅に車を走らせる男性を見ながら、西村絵里は唇を引き締めた。
空はすでに暗くなっていた。思いがけず、自分と黒田真一がゴルフ場で丸一日午後を過ごしていたなんて。
重要なのは……
二人が温泉室内でもかなり長く過ごしたことだ。
温泉プールで起きたことを思い出すと。
西村絵里はますます顔を赤らめた。
黒田真一は黒い瞳で時折、隣の西村絵里を見つめ、口元の笑みを深めた。
……
西村絵里と黒田真一が青空ビルに到着したとき、ちょうど食事の繁忙期だったが、黒田真一が財布からゴールドカードを出すと、すぐに最高級の個室に案内された。
西村絵里は唇を引き締め、豪華絢爛な内装デザインを見つめた。
確かに、4年前とは雲泥の差がある。
あの頃、家族三人でここに食事に来たときは。
本当に素晴らしい思い出がたくさんあった。
「何が食べたい?君が注文してくれ。ここの料理は私の口に合わないんだ。知っての通り、今は君の作る料理しか好きじゃない」
西村絵里:「……」
男性の黒い瞳に青空ビルの料理への嫌悪感を見て取り、西村絵里は口角をピクリと動かした。
これは五つ星ホテルの料理なのに。
黒田真一が嫌うなんて。
彼は……
本当にツンデレすぎる。
西村絵里も遠慮せず、無料でご馳走になるなら、食べないと損だ。
それにゴルフ場でプレーするのは確かに体力を消耗する。
西村絵里は今、腕がひどく痛むのを感じていた。
「黒田社長、注文しました」
「うん」
西村絵里が注文したものを、黒田真一は簡単に一瞥した後、すぐに料理を運ぶよう手配した。
西村絵里は携帯が一度振動したのに気づき、開いてみると藤原海翔からのメッセージだった。
どこで食事してる?
西村絵里は素早く返信した。
青空ビル。
うん、甘奈を連れていくよ。トイレに行く隙に、出てきて甘奈ちゃんと少し食事してあげて。
西村絵里:「……」
それはいい方法かもしれない。
そうするのは確かに危険度が高いけれど。