第306章 お前は俺、黒田真一の妻だ2更(9)

贈り物が多すぎて、積み上げられ、天井に届きそうなほどだった。

西村絵里：「……」

やりすぎじゃない？

デザイン部の他の女性同僚たちは羨ましさと嫉妬で一杯だった。

矢崎凌空に至っては顔を真っ赤にして怒っていた。

西村絵里は口元を引き締め、冷静に言った：「全部持ち帰ってください。私には必要ありません」

自分は黒田グループのデザイナーで、黒田グループから給料をもらっている。氷川様のものを受け取るなら、それは賄賂になる。

そんな行為は...悪質だ。

西村絵里がそう言うと...ボディーガードたちはまだ躊躇していた。

西村絵里はその様子を見て直接言った：「大丈夫、あなたたちを困らせるつもりはありません。氷川様には私から説明します」

「はい」

……

黒服の一団は弱々しく山のように積まれた贈り物を全て持ち帰るしかなかった。

西村絵里は深呼吸して、携帯を取り出し黒田真一に電話をかけようとしたが、思いがけず黒田真一からのメッセージを受け取った。

飛行機に乗るところだから電話は受けられない。絵里、他意はないんだ。この方法なら、デザイン部の他のスタッフに君が枕営業したと思われることもない。俺の妻、黒田真一の奥さんには一切の汚点があってはならない。

西村絵里：「……」

この男は……

先見の明があるのか。

彼は自分の心の動きを正確に見抜いている。

西村絵里はその言葉に表情を変えた。

つまり……

黒田真一がこうしたのは、自分が一度に氷川様の8つのデザイン案を受注したことで、矢崎凌空をはじめとするデザイン部の人たちに陰口を叩かれると思ったからなのか？

だから、積極的に自分を助けてくれたのだ。

こうすれば、氷川様は黒田奥さんのデザイン案に感謝し、同時にデザイン部の人々の口も封じることができる。

西村絵里は黒田真一にメッセージを返そうと手を上げたが、考え直して携帯の画面をロックした。

しかし、頭の中では黒田真一が送ったメッセージが繰り返し浮かんでいた。

俺の妻、黒田真一の奥さんには一切の汚点があってはならない。

黒田真一はこんなに傲慢な社長だということを、自分でわかっているのだろうか？

……

飛行機の中：

黒田真一は契約書に視線を落とし、非常に集中していた。黒い瞳は水のように静かで、一切の波紋もなかった。