第332章 黒田奥様は黒田さんの家に帰りたい1更(5)

西村絵里は小さな拳を握りしめ、甘奈がまだ藤原海翔の腕の中で興奮して拍手しているのを見て、自ら口を開いた。「甘奈、ママのところに来て……もうすぐ、家に帰るわよ。覚えておいて……人がたくさんいるから、ママの首にしっかりつかまって、絶対に離さないでね、わかった?」

「うーん……ママ、もう帰るの?まだおじさんと遊び足りないよ……やだよ。」

「甘奈さん、わがままは駄目よ。」

「うーん……わかったよ……ママ怖いよ。」

黒田真一はそれを聞いて口元に嘲笑の色を浮かべ、そして口を開いた。「甘奈、こっちにおいで。」

「やったー。」

甘奈はさっきまで西村絵里の腕の中でじゃれていたが、黒田真一が自分を呼ぶのを聞くと、すぐに黒田真一のいる方向へ走っていった。

「おじさん、どうしたの?」

「あとでボーイの祝勝会があるんだけど、参加したい?」

「もちろん!」

「よし、じゃあ連れていってあげる。」

「黒田社長……」

西村絵里は黒田真一が甘奈を連れて行こうとしているのを聞いて、思わず口を開いた。

「ん?」

「もう遅いわ、甘奈は家に帰って休むべきだと思うの。明日は月曜日で、幼稚園に行かなきゃいけないのよ。」

「何事にも特別な状況というものがある。今日はボーイのコンサートだし、甘奈がもう少し長居しても、大きな問題はないと思うがね。」

黒田真一は断固として言い、表情はますます冷たくなった。

西村絵里:「……」

黒田真一は何を言いたいの?

西村絵里は唇を噛み、黒田真一と道理を話そうとした。

「黒田社長、甘奈は私の娘です……」

「西村絵里、君と僕がどういう関係か忘れないでくれ。」

西村絵里:「……」

西村絵里は黒田真一のきっぱりとした拒絶に、小さな手を再び握りしめた。

言いたいことがあっても、子供の前ですべてを明かすのが心配だった。

甘奈は西村絵里と黒田真一が対立している様子を見て、小さな声で言った。「パパ、ママ、二人は喧嘩してるの?」

「甘奈、今なんて呼んだの?」

西村絵里は甘奈の呼び方に顔色を変えた。

前回、甘奈が幼稚園でパパと呼んだことは気にしなかった。

でもこの男は黒田真一……パパと呼ぶのはダメ。