今となっては、この結婚は罠だったと思える。黒田真一が手放さなければ、西村絵里は一生抜け出せないだろう。
くそっ、藤原海翔は自分の無力さを並々ならぬほど憎んでいた。
本当に前に出て黒田真一と一戦交えたいところだった。
しかし甘奈がそばにいるから……
考えた末、藤原海翔はあきらめるしかなかった。
藤原海翔は口元を引き締め、大きな手を拳に握りしめた。
……
甘奈は上機嫌で、黒田真一とじゃれ合った後、積極的に藤原海翔の側に駆け寄った。藤原海翔の表情があまり良くないのを見て、自ら近づいてチュッとキスをした。
「藤原おじさん?」
「ん?」
甘奈のそんな可愛らしい様子を見て、藤原海翔の気分はすぐに良くなった。
誰に対しても怒ることはできても……
唯一、西村絵里と甘奈に対しては怒れなかった。