堇顔

表向きだけの結婚契約――有効期限は3年。
形だけの夫婦関係、まるで他人同然。
そして契約終了を目前に、彼女は新たな職場に就職する。まさか、その上司が夫だった。
「すみません。邪魔するつもりはありません。ただ、黒田グループを選んだのは……お給料が良かったからです」
冷静な態度で履歴書をめくる男は、ふと問いかけた。
「西村絵里、19歳のとき、どうして1年間休学していたの？」
「……大学1年の時、家庭に少し事情がありまして」
「そう？じゃあ、なぜ下腹部に傷があるの？」
「……虫垂炎です」
その瞳は、どこまでも深く、彼女の心を見透かすようだった。
3年の契約が満了し、彼女は痛みを堪えながら、静かに、そして毅然と背を向けて離婚届にサインした。
けれどその後も、なぜか元夫はしつこく付きまとってきて……
さらには、彼女の恋のチャンスまで次々と潰してくる。

黒田さん、結婚して見ませんか～

藤原お爺様は本当に頑固な老人だ。


西村絵里は藤原お爺様が甘奈は藤原家の子供だと確信しているのを見て、ますます頭を悩ませた。


黒田真一はその様子を見て、大きな手で西村絵里の細い腰を抱き寄せ、薄い唇を引き締めながら、何気なく口を開いた。「藤原お爺様...あなたは仙台市の重鎮であり、筋から言えば私は後輩で、あなたの前で無礼を働くべきではありませんが...甘奈は私と西村絵里の娘です...藤原家とは、一体どんな関係があるのでしょうか？」


ここまで言うと、黒田真一は非常に巧みに、深い黒い瞳で目の前の藤原お爺様を見つめ、少しも恐れる様子はなかった。


この人を遠ざける傲慢な態度に、藤原お爺様は表情を硬くし、顔色が悪くなった。


「黒田さん...あなたと黒田奥さんは明らかに2年前に結婚したばかりなのに、この甘奈は、もう3歳ですよ...」


第368章 虎父に犬女なし1更(2)

第368章虎父に犬女なし1更(2)